
一輪のいのちに出会うとき
〜完全無農薬の薔薇が手にはいったら~
薔薇風呂のすすめ〜
とも治療室では、長年にわたり植物のちからを研究し、東洋医学と植物療法を結び合わせた臨床をおこなっています。
そのなかでも**薔薇(ばら)**は、特別な存在。華やかで、繊細で、香り高い。そしてその背景には、たゆまぬ手間といのちへの深い畏敬が欠かせません。
化学肥料も農薬も使わずに
薔薇栽培は「無農薬は無理」とよく言われます。確かに虫や病気が多い。だけど、その「常識」を念頭に置きながらも、ひたすら無骨に手探りで、ともかく精いっぱいの愛情、畏敬、そして、雨に風に、自然の営みに 耳を澄ませて、の、オーガニックな薔薇を追求しています。
育てるか、無農薬薔薇愛好家に分けていただくか、無農薬薔薇農家さんからいただくか。いずれにせよ今年もまた奇跡のように咲いてくれた薔薇たち…
昨今の気象変動を思うと、毎年、「これが最後かもしれない」と頭をよぎるのです。
今この時 切ないくらいに美しく花開く薔薇に触れるたび、いのちとは何かを問われているようなしんとした思いに包まれます。
■ 一輪一輪が、まったく違う
そして気づいたのです。
ていねいに、花と向き合うと、不思議なことに、どれひとつとして同じ花はないのです。香り、たたずまい、花びらの色、葉の枝の伸び方…
一輪一輪が、かけがえのない個性をもって咲いている。
まるで、「あなたも唯一無二。あなたは、あなたのままでいい」と教えてくれるかのようです。
一生に一度は体験してほしい「薔薇風呂」
オーガニックな薔薇が手にはいったら…使い道は多彩です。
ジャム、ハーブティー、薔薇ソルト、薔薇シュガーなど… はちみつともよく合います。
けれど、もっとも贅沢で、もっとも深く五感に届く使い方として、一生に一度は体験してほしい。それが、「薔薇風呂」。
◇ 静けさと光をしつらえて
光は控えめに。
キャンドルの炎や、隣の部屋からもれる柔らかな光が、感覚をやさしくひらいてくれます。
薔薇は一輪。花の首だけを、器にそっと入れて、お風呂場へ。
ご自身のからだを湯に沈めたら、その器をお湯に浮かべましょう。
香りを楽しみ 花を眺めたあと、そっと花びらをはずして、湯船に浮かべてください。
めしべ・おしべは使わず器に残します。
よかったら、花びらを一枚、口に含んでみてください。みずみずしさ、ほんのりとした苦味、香りとは異なる「味」という感覚。
香り、味、色、手触り、肌触り、花の存在を感じるひとときが、深い静けさとともに、こころとからだを包み込んでくれるはずです。
心身すべてで薔薇のいのちを受け取る、一期一会の時間です。
◇ 五感で出会ういのち
湯のなかであたたまった花びらから、柔らかく繊細な香りがたちのぼります。
少し元気のなかった花びらでさえ、お湯のなかでふっくらとよみがえるようです。ときとともに、成分がゆっくりと湯に溶け出し、花びらは静かに 少ししおれてゆきます。
その変化は「いのち」の時間そのもの。
香料のような強い香りではないけれど、確かにこころとからだにふかく届いていきます。肌に触れる感触、色の移ろい、すべてがいのちの響きです。
最後は、しっかりお水を
お風呂のあと、花びらを回収すれば、お湯は意外ときれいなまま。洗濯に使えるくらいです。
湯上がりにはたっぷりと肌にも体の中にも水分補給をして、冷えないように。
できれば、やわらかなタオルケットなどにくるまって、ゆっくり ひととき、余韻を味わってください。
薔薇の花は、その一輪が その存在すべて、ありのままを差し出してくれます。
どうぞ、自然のいのちと、ご自分のいのちを、薔薇と
やさしく、深く、出会わせてあげてください。
河合から薔薇を受け取った方はどうだったかぜひ聞かせてくださいね。